在宅介護で限界を感じる前に知っておきたい5つのこと

在宅介護で限界を感じる前に知っておきたい5つのことを解説するイラスト 介護の知識

① 暴言・暴力が出たとき、あなたは悪くない

認知症が進むと、それまで温厚だった人が突然怒鳴ったり、手が出るようになることがあります。家族にとって、これが一番つらいことのひとつではないでしょうか。

「なんでこんなひどいことを言うんだろう」「自分の介護が悪いのかな」と感じるかもしれません。でも、これはあなたのせいではありません。

暴言や暴力は、認知症の症状のひとつです。本人が「あなたを傷つけたい」と思っているわけではなく、不安や混乱、体の不快感が言葉や行動として出てきているのです。

そんなときに「正しく対応しよう」と頑張りすぎなくていいです。

  • その場をそっと離れる
  • 「そうですか」と受け流す
  • 反論しない、謝らない

これだけで十分です。完璧な返し方なんてありません。あなた自身が深く傷つく前に、その場を離れることが最善の対応であることも多い。

「逃げた」ではなく、「自分を守った」と思ってください。

それが続くようなら、ひとりで抱え込まずにケアマネジャーや訪問看護師に相談を。第三者の目が入るだけで、状況が変わることがあります。

② 「正しい対応」なんてない。試行錯誤していい

「本人のペースに合わせましょう」とよく言われますが、実際には時間がなかったり、焦ったり、うまくいかないことの方が多い。

介護している側が焦ることは、ごく当たり前のことです。そこに罪悪感を持つ必要はありません。罪悪感が積み重なることの方が、介護者を追い詰めていきます。

大切なのは「試行錯誤していいんだ」と知ること。ひとつうまくいったら、それで十分です。

お風呂の拒否を例に考えてみましょう

何日も入浴を拒否する認知症の方は珍しくありません。これは「頑固」なのでも「サボっている」のでもなく、お風呂の入り方がわからなくなっていることが原因のひとつです。

お湯の出し方がわからない、シャンプーと石鹸の区別がつかない、脱衣所で何をすればいいか混乱している——そういったことが起きています。

無理やり入浴させようとすると、本人が怖がったり、転倒のリスクが高まったりします。関係が壊れてしまうことも。

臭いが気になる時もありますが、すぐに命に関わることでなければ、少し大目に見ていい場面もあります。

試してみる価値がある、よくある工夫の例

  • まず落ち着いた声で声をかけてみる
  • 拒否されたら、その日はやめる(また明日)
  • 温かいタオルを渡して「顔だけ拭こうか」と誘う
  • 着替えをさりげなく目の届く場所に出しておく
  • 「病院の日だから」など外出の口実を作り、「せっかくだからきれいにしていこう」という気持ちになるよう仕向ける
  • ヘルパーや訪問看護師など、第三者に関わってもらう(家族が言っても聞かないのに、支援者の言うことは聞く、というケースはよくあります)

どれかひとつでもうまくいったら、それで十分。ラッキーくらいの気持ちで。

完璧な対応を目指しすぎると、それ自体がストレスになります。「今日はダメだったな」ではなく、「今日もよくやった」で終われるといい。

③ 「施設も選択肢のひとつ」と知っておく

在宅介護を続けていると、「施設に入れるのは逃げることだ」と感じる方がいます。でも、それは違います。

施設に移ることは、介護を「やめる」ことではありません。

本人により専門的なケアを受けてもらい、家族は「介護者」から「家族」に戻る——それも、ひとつの形です。

こんなサインが出てきたら、施設を考え始める時期かもしれません

  • 夜中の徘徊が続いて、家族が眠れない日が続いている
  • 介護者自身が体を壊しそうになっている
  • 医療的なケアが必要になってきた(胃ろう・吸引など)
  • 本人が自宅での生活に危険を感じるようになった

主な施設の種類(参考)

施設名特徴
特別養護老人ホーム(特養)要介護3以上。費用が比較的安い。入居待ちが多い
介護老人保健施設(老健)リハビリが中心。在宅復帰を目標とすることが多い
グループホーム認知症専門。少人数で家庭的な雰囲気
有料老人ホーム費用の幅が広い。入居しやすいが高額なことも

ケアマネジャーに「どんな施設が合っているか」を相談するのが最初の一歩です。

④ 在宅看取りを選ぶ前に知っておくこと

「最期は自宅で」という希望を持つ方も増えています。本人の意思を尊重したい気持ちは当然です。でも、在宅看取りには、家族の覚悟と体制が必要です。

知らずに始めて途中でパニックになることがないよう、事前に確認しておきましょう。

在宅看取りに必要な主なサポート

  • 訪問診療(定期的に医師が自宅に来る)
  • 訪問看護(体のケアや処置を行う)
  • 24時間対応できる連絡先(訪問診療・訪問看護のチームが夜間・休日も電話で対応してくれる体制のこと。「何かあったときにすぐ連絡できる医師・看護師がいる」ことが在宅看取りの大前提です)
  • 親族の理解と同意(一人だけが「在宅で」と思っていてもうまくいかないことがあります。できるだけ頼れる親族が同じ方向を向いていると、いざというときに支え合えます)
  • 本人の意思確認(できるうちに、はっきりと)

「在宅で看取る」と決めても、途中で変わっていい

自宅での看取りを希望していても、本人の苦痛症状が強くなったり、思いのほか長期化して家族が限界になることもあります。

そんなときは、緩和ケア病棟のある病院を考えるのもひとつの選択肢です。「なにがなんでも自宅で」と気負わず、状況に応じて柔軟に考えていい。

そのためにも、途中で話し合える家族・親族がそばにいると、とても心強いです。

思うように看取れなかったとしても

「こんなはずじゃなかった」「もっとできることがあったかもしれない」——看取りのあとに、そう感じる方はたくさんいます。

でも、後悔が残るのは、それだけ精一杯考えた証です。

完璧な介護も、完璧な看取りもありません。どこかで「これでよかったんだ」「あの人の人生は良かったと思う」と、あなた自身が思えるときが来ることを願っています。

⑤ 介護者が倒れたら、介護は続けられない

最後に、一番大切なことを言います。

あなた自身が倒れたら、介護は終わりです。

「自分のことは後回し」にしがちなのが介護者です。でも、介護者が元気でいることが、一番の介護です。

こんな状態が続いていたら、限界のサインです

  • 眠れない日が続いている
  • 食欲がない
  • 「消えてしまいたい」と思うことがある
  • 介護している人を「いなくなればいい」と思ったことがある
  • 誰にも話せず、ずっとひとりで抱えている
  • 趣味や楽しみが何もなくなった

ひとつでも当てはまるなら、今すぐ誰かに話してください。

相談できる場所

  • ケアマネジャー(まず最初に)
  • 地域包括支援センター(市区町村に必ずあります)
  • かかりつけ医
  • 介護者向けの家族会・サポートグループ

「こんなことで相談していいのかな」と思うことほど、相談してください。それが支援者の仕事です。

まとめ

在宅介護に「正解」はありません。

うまくいかない日があって当然。焦ることも、腹が立つことも、普通のことです。それでもなんとかやってきた、その積み重ねが介護です。

ひとつだけ覚えておいてほしいのは、「助けを求めることは、逃げることじゃない」ということ。

限界を感じる前に、少しだけ周りに頼ってみてください。

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