ケアマネになりたての頃、私はとにかく「役に立ちたい」という気持ちが先走っていました。 介護で困っている利用者さんを目の前にすると、使えるサービスはできるだけ使って少しでも介護が楽になってもらいたい。デイサービスも、ヘルパーも、福祉用具レンタルも。「これも必要かも」「あれも入れよう」と、善意だけで動いていました。
でもその善意が、思わぬ形で利用者さんの負担になってしまいました。
介護サービスには「使える上限」がある
介護保険には、要介護度ごとに1か月に使えるサービスの上限(支給限度額)が決まっています。点数(単位)で管理されていて、その範囲内であれば利用者の自己負担は1〜3割で済みます。 問題は、上限を超えた分は全額が利用者負担になるという点です。
たとえば上限が18,000点のところを22,000点分のサービスを入れてしまうと、超過した4,000点分、費用に換算すると約4万円はそのまま利用者さんの実費請求になります。
これを「限度額超過」といいます。
月初の給付管理で、青ざめた
毎月、ケアマネは「給付管理」という業務を行います。利用者さんごとに、その月に使ったサービスの点数を集計して、国保連(国民健康保険団体連合会)に請求データを提出する仕事です。
その月初の作業中、私はある利用者さんのデータを見て固まりました。 点数が、限度額を大幅に超えていたのです。
焦って計算し直しても、結果は同じ。しかも、すでにサービスは提供済み。取り消しのきく話ではありませんでした。 自分がプランを組んだ時、限度額の確認が甘かったのです。サービスを増やすことに夢中で、超過の説明を利用者さんにきちんとしていませんでした。
頭が真っ白になりました。
でも、それ以上に心が痛かったのは別のことでした。 この利用者さんは、新人の私にいつも温かい言葉をかけてくれていました。「あなたが来てくれると安心するよ」と、何度も言ってくれていました。その方に、多大な迷惑をかけてしまい、裏切ってしまったような気持ちになりました。
上司と一緒に動いた
まず上司に報告しました。 正直に全部話しました。上司は叱るよりも先に、一緒に対処してくれました。次にどう動くか、利用者さんへの説明をどうするか。一人で抱え込まずに済んだのは、上司のおかげでした。
「あの時助かったからいいですよ」
おそるおそる利用者さんに連絡し、超過分の負担が発生することを説明しました。当然、謝罪もしました。 返ってきた言葉は、予想外のものでした。
「あの時、サービスを増やしてもらって本当に助かったんです。だからいいですよ。」
思わず「えっ」と声が出るほど驚きました。そんなにすぐに許してもらえるとは、思ってもいなかったからです。
この話は「よかった」で終わらせてはいけない出来事だと思っています。
もし利用者さんが経済的に余裕のない方だったら。
「いいですよ」と言えない事情があったら。
善意は大切です。でも、善意だけでは人を守れません。
プロとして動くには、制度の知識と、丁寧な説明と、確認の習慣が必要だと、この経験で骨身に沁みました。
そして同時に思いました。「この人のために、もっと頑張ろう」と。
あの失敗から得た気づき
それ以来、限度額について必ず利用者さんに説明するようにしました。毎月の利用票をお持ちする時には、「今月は何点使っています」と、その月の利用点数を一緒に確認するようにしています。
もう一つ、大きく変わったことがあります。
それまで私は「自分で考えて、自分で調べなければならない」と思っていました。でもあの時、上司が一緒に動いてくれたことで気づきました。頼っていいんだと。相談していいんだと。
もし後輩が入ってきたら、自分も同じようにしようと決めました。困っていたら協力し、「一人で抱え込まなくていい」と声をかけます。
真摯に向き合えば、相手にも信頼されます。誰かを支えることで、自分もまた支えられる。そんな繰り返しの中で、ケアマネとして自分も育っていけると思っています。
ケアマネも、支えられている
ケアマネは利用者さんやご家族を支援する仕事です。でもこの経験から、ケアマネもまた、利用者さんやご家族に支えられているのだと気づきました。 「あの時助かったから」という一言が、今も私の中に生きています。

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