介護は、毎日の食事や排泄のお手伝い、通院の付き添い、夜間の対応など、気の抜けない日々が続きます。介護が長期におよぶと、心身ともに疲れを感じることも少なくありません。
「大切な家族のために頑張らなければ」という気持ちは尊いものです。でも、介護をする方の健康が損なわれてしまうと、介護は長続きしません。

ちょっと疲れたから介護を休みたい

はずせない用事があるので数日だけ誰かに任せたい
このような時に頼れるのが、ショートステイです。
ショートステイは、在宅での生活を続けるために利用できる介護保険の宿泊サービスです。
この記事では、介護が始まってからしばらく経ち、少し立ち止まりたくなった方に向けて、ショートステイの基本をお伝えします。
この記事でわかること
・ショートステイとは何か、どんな時に使えるのか
・気になる費用の目安(多床室なら1日約4,000〜5,000円)
・使うメリットと、知っておきたい注意点
・「限界になる前」に使っていい、という現役ケアマネの本音

ショートステイとは?
- 介護保険を使い、連続30日まで利用できる
- 介護系の施設と医療系の施設がある
- 介護者の休養だけでなく用事など理由は問わない
- 送迎サービスがある
ショートステイは、介護が必要な方が、数日〜数週間程度、介護施設に一時的に泊まることができる介護保険のサービスです。
特別養護老人ホームなど介護系の施設と、老人保健施設など医療系の施設があります。医療系の施設ではリハビリを提供しているところもあります。医療系の方が利用料が高くなります。
利用日数は、介護者の疲れや用事など状況に応じて原則連続で30日まで利用できます。施設に連れて行くことが難しい場合は、送迎サービスがあります。
どんな時に使う?
ショートステイは、次のような場面で使われることが多いです。
介護者が体調を崩したとき
冠婚葬祭や用事や旅行で家を空けるとき
夜間の介護が続き、休息が必要なとき
気力や体力の限界を感じ始めたとき
特別な理由がないと使えないサービスではありません。介護する人が休養するための選択肢の一つでもあります。
ショートステイの費用はどれくらい?
ショートステイの費用は、介護保険の自己負担金とそれ以外の実費で決まります。
介護保険の自己負担金
介護保険を利用する時、1〜3割の自己負担金がかかります。ショートステイ1日あたりのおおよその自己負担金の目安は以下のとおりです。
1割負担の場合
要支援1:約450円
要支援2:約560円
要介護1: 約600〜700円
要介護2: 約700〜800円
要介護3: 約800〜900円
要介護4: 約900〜1,000円
要介護5: 約1,000〜1,100円
介護保険外の費用
介護保険以外の費用として、食事代と部屋代がかかります。部屋代は大部屋か個室かで料金が異なります。その他にかかる費用として、備品利用やレクリエーション等がかかることがあります。
食事代: 約1,500〜2,500円
部屋代:約1,000〜2,500円
例:要介護3・自己負担1割・特別養護老人ホーム大部屋の場合
- 介護保険の自己負担:約900円
- 食費・滞在費など:約4,000円
- 合計:約4,900円
▶ 大部屋(多床室)を使う場合、1日あたり およそ4,000〜5,000円ほどが目安です。
個室を選ぶと部屋代が高くなり、1日5,000〜8,000円ほどになることもあります。施設によっては個室しかないところもあります。
※金額はあくまで目安です。実際の費用は、利用する事業所に確認してください。
※食費・居住費は令和8年(2026年)8月に見直されます。住民税非課税世帯など所得の低い方は、負担を軽くする「介護保険負担限度額認定証」の対象になります(金額の基準も改定される予定です)。
介護にかかるお金全体は、在宅介護にかかるお金のめやすでもくわしく解説しています。
ショートステイを使うメリット
① 介護者が休める
一番大きなメリットは、介護者が介護から物理的に離れる時間を持てることです。
- 眠れる
- 体を休められる
- 気持ちを立て直せる
これは、介護を続けるうえでとても重要です。
② 自分の介護を振り返ることができる
ショートステイを初めて利用すると、物理的に要介護者との距離が取れます。それにより日々の介護から解放されゆとりができることで、「自分の介護を、少し離れたところから見られた」という介護者もいます。
毎日介護を続けていると、それが当たり前になり、「何が大変なのか」「どこで無理をしているのか」が見えにくくなります。数日離れてみて初めて、
「夜の対応が一番きつかった」
「このペースは長くは続かないかもしれない」
「夜のオムツ交換が続くとイライラしてしまう」
と気づくことがあります。
このように介護を客観視することで、肩の力が抜け介護に対する見方が変わることがあります。
③「預けても大丈夫だった」という安心感
初めて利用する前は、不安や申し訳なさを感じる方も多いです。でも、実際に利用してみると、
- 思ったより落ち着いて過ごせた
- 施設の対応を見て安心できた
- 介護がより大変になったときに、現実的に施設入所という選択を考えられるようになった
という声が聞かれます。
介護は先が見通しづらいですが、安心できる場所が見つかることはこれからの介護の自信につながります。
ショートステイのデメリット・注意点
① 本人が嫌がることがある
介護を受ける本人は、できれば家にいたいというのが本音です。特に認知症がある場合、知らない場所への不安から、施設で落ち着かない様子が見られることもあります。これは環境の変化からくるものです。
ショートステイは、利用者本人にとってはあまり気乗りのしないサービスといえます。その一方で、本人は「毎日介護してくれる家族に申し訳ない」と感じていることも少なくありません。
ショートステイは入院と違い、帰宅する日が決まっています。定期的に利用するうちに慣れていくことも多く、「いつ家に帰れるか」が分かっていることは、本人の安心にもつながります。
② 費用がかかる
他のサービスに比べると、数日でまとまった出費になります。1日5,000円として、5日利用すると25,000円ほどになります。
費用が気になる方には、負担を軽くする制度があります。
介護保険負担限度額認定証
ショートステイの食事代や部屋代が軽減される制度です。住民税非課税世帯の方や、預貯金などの資産が一定額以下の方が対象です。
事前に「何泊で、いくらくらいかかるか」を確認しておくと安心です。
③ 活動が少なく、生活リズムが変わることがある
ショートステイは「生活の場の延長」という位置づけのサービスです。デイサービスのように活動や機能訓練が中心ではないため、動く量が減ったり、生活リズムが変わったりする方もいます。
利用する頻度や日数をケアマネと相談しながら、上手に活用することが大切です。
④ すぐに使えないことがある
ショートステイは予約制です。2ヶ月前から予約が始まるところが多く、利用したい日が満員で使えないこともあるため、「いつでも使いたい時にすぐ使える」とは限りません。
また、初めて利用する場合は事前面談と契約が必要です。ただし、介護者の急病など緊急の事情がある場合は、緊急ショートステイを利用できることもあります。
限界になってから慌てないよう、余裕のある時期から施設と契約しておいたり、複数の施設を選んでおくと安心です。
⑤ 体調を崩すと、途中で退所になることがある
ショートステイ(特に特別養護老人ホームなどの生活介護型)は、医療的な対応に限りがあります。
そのため、利用中に急な発熱や、受診・治療が必要なケガなどがあると、いったん退所して、受診や入院、ご家庭での対応に切り替わることがあります。
「預けたから安心」と完全に手を離れるわけではなく、いざというときは連絡を受けてお迎えに行く可能性がある——この点は知っておくと慌てずにすみます。なお、かかりつけ医や普段のお薬の情報を施設に渡しておくと、体調を崩したときの対応がスムーズです。
また、緊急時には、ショートステイ先から病院へ救急搬送されることがあります。そのため緊急連絡先は、必ずつながる番号を伝えておきましょう。すぐに駆けつけることができなくても、状況報告を受けて、介護者の意向を救急隊に伝えることが大切です。
まげの現場メモ|ケアマネ歴19年ショートステイのスタッフは介護のプロです。でも、毎日そばで見ている家族ほど、その方の「好み」「くせ」「体調のちょっとした変化」を細かく分かっている人はいません。
つまり、利用者さんにとっていちばんの介護のプロは、ご家族なんです。
だから、家でしている介護を「そっくりそのまま」ショートに求めると、「家と違う」と感じてしまうことがあります。
ショートステイは“家庭の介護の完全な代わり”ではなく、“介護を続けるために少し休む場所”。そう考えておくと、お互いに気持ちが楽になります。
ショートステイは「限界になる前」に使っていい
ショートステイを使うことに罪悪感を覚える方もいますが、これは介護から逃げるためでも、楽をするためでもありません。
介護者が限界を超えて体調を崩したり、イライラして強く当たってしまう。そうなる前に使ってほしいサービスです。
介護から物理的に離れる時間は、介護を続けるうえで必要なことです。
「まだ大丈夫か?」ではなく、
「この生活を続けられるか?」で考えてみてください。
👉 在宅介護のつらさを感じ始めた方は、在宅介護で限界を感じる前に知っておきたい5つのこともあわせてお読みください。
まとめ
- ショートステイは一時的に施設に泊まる介護保険サービス
- 在宅介護を続けるための支えのひとつ
- 費用の目安は、多床室なら1日あたり約4,000〜5,000円(個室はもっと高くなります)
- 介護者が休め、自分の介護を振り返るきっかけにもなる
- 本人の不安や生活リズムの変化、体調急変時の退所には注意が必要
迷ったときは、一人で抱え込まず、ケアマネに相談してみてください。
本音を言えば、利用者の多くは家にいたいと思っています。でも、毎日介護をしてくれるあなたのことを心配する気持ちも、ちゃんと持っています。認知症の方でも、その感情は失われていません。
あなたが倒れてしまわないために。
介護が原因で、大切な関係が壊れてしまわないために。
数日だけ、離れてみてください。
利用者ご自身も、あなたのためなら、きっと数日のショートステイを頑張ってくれます。
少し離れて、利用者が家に帰ってきたとき、笑顔で迎えられるように。


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